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あの安高


あのドタバタ騒ぎのあとオレに関する噂は減っていった。報道されないから(ニュース)価値がなくなる。すると自分がその噂を持っている価値がなくなる。その噂を使う人間が減る。オレについての記憶は世間の人間の頭から消えていく。

一時は月に204件もあったオレについての噂は先月は53件にまでになった。原因がマスコミだけにあるわけではないことは、無名の人間についての同じような記事の総数が変らないことからもわかる。別口の記事が書かれるだけだ。オレの場合は手ごろなキャラだからもてはやされただけなのだ。

たしかに、手近にオレのような扱いやすいキャラがいなければ噂はたたない。あのような記事の総数も減っていくのかもしれない。それに自分こそ正義なのだと考えているやつが自分の理想の社会を現実のものにするためにオレの噂を悪用しないとは限らない。ないほうがいいのだ。

その反対に、オレがあの緑色の声をあげ続けることで、何重にも折りたたまれて隠されていたウソの折り目が次々と開かれていって、元の状態に戻され、あばかれることが可能になるのかもしれない、と思う時もある。しかしその犠牲は大きすぎる。


きのう、ひさしぶりに会社のエレベーターの中で明子と会った。
2人だけだったので、明子はそっぽをむいていた。

オレは冗談を言おうとして

「男はみんなウソつきだ、と男が言う場合、それは自己言及のパラドックスになるけれど、男はみんなウソつきだ、と女が言う場合、それは自己言及のパラドックスにならない。この命題はホントかウソか?」と聞いた。

明子はこういうクイズが好きなのだ。

「まさか、その男と女が特別な仲だったらその命題はなりたたない、といいたいんじゃないでしょうね?」

みんなが仲良くなれば、自然にオレについての噂も無くなるのだと単純に思う。

引用;人間的自由の条件,竹田青嗣,講談社,2004.12.7.
SEPTEMBER 1, 1939 W.H. Auden
http://www.poemdujour.com/Sept1.1939.html
Rumors About Me, Yasutaka Tsutsui, Translated by Andrew Driver,Zoetrope All-Story,Summer2008,Vol.12, No.2
http://www.all-story.com/issues.cgi?action=show_story&story_id=386

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